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by QUIs(くいず)

大阪・森ノ宮医療大学「車椅子操作スキル講習会」に参加して

こんにちは、インターン生の大崎です。

先月参加した大阪・森ノ宮医療大学「車椅子操作スキル講習会」のレポートを掲載いたします。

はじめに

この度、「サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト」大学連携事業として、2日間、大阪・森ノ宮医療大学にて「車椅子操作スキル講習会」に参加しました。初日は、車椅子の基本的な操作やターンの操作、2日目はより応用的なボールを使った操作やマットを重ねたキャスター上げなどを、参加学生の様子を見学しながら、作業・理学療法士の文脈における指導のあり方や車椅子の可能性、利用者の背景等を学びました。今回の報告では、講習会で学んだことや感じたことなどを、主に当日の語りに基づき、以下の節に分けて述べてみようと思います。

  1. 本講習会の開催背景

本講習会は「サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト」大学連携事業として、下肢に障害をもつ人に対して車椅子の便利さを伝えるといったサントリーCSR活動の一環から、作業療法士・理学療法士養成機関大学との連携事業として開催されました。車椅子利用者の補助に際して、自分も実際に使えるようになることで理解を深める目的で行われ、企業側・大学側双方の熱意を身近に感じながら、参加することができました。

  1. 車椅子の機能と利用の実際

車椅子は、身体の重心に沿って、身体の反応が素直に車椅子に反映され、特に下肢の身体感覚が掴みやすい構造になっているそうです。こうした自らの「足」、体の一部となって身体感覚を支えてくれる車椅子は、本来、移動ではなく、その人がその場所で社会生活を営むために用いられるものであり、行動の制約を強調するものではなく、姿勢や身体の動きによって自分のできることを知る機会をもたらしてくれます。

その一方で今日では、少子高齢化等に伴う医療費の増加から入院期間の短縮が推進されたことで、車椅子生活を強いられる患者さんのなかには十分な操作指導を受けられず、退院後、そのまま自宅に引きこもらざるを得ない状況が生じています。さらに、実際に指導を受けても、指導の過程や体を傾けてみて感じる恐怖、やっぱりできなかったといった経験が、その後の車椅子利用の抵抗感をさらに強めてきました。

こうした制約は、あくまでも車椅子利用を促す社会の問題として、社会の側から車椅子操作の可能性を高めていくことが求められています。

  1. 理学療法・作業療法の文脈からみた車椅子指導

今後の退院患者の車椅子生活を支えるためには、チーム医療に基づき、患者のリハビリテーションのなかで、車椅子のより効果的な操作指導を行うことも重要になってきます。本講習会では、実際に車椅子操作を体験するなかで、スモールステップの考え方や患者理解、情報提示の仕方、言葉の選び方等、指導における様々な工夫や意識の持ち方を学ぶことができました。

例えば、スモールステップは、段階的にスキルの獲得が可能となる一方で、逆に間違ったり、できなかったりしても一つ前のステップに戻れば練習できるとも考えられます。対象者の状況に合わせてスキル獲得に必要な段階設定や教示を行うことが重要であり、今の気持ちが理解されない感覚は利用者と指導者の距離を空けてしまうことからも、改めて両者のコミュニケーションによる信頼関係が前提にあることを学びました。

また、何気なく使う言葉でも、その言葉によってイメージされる動作が、本当に操作に必要な動作を想像させるのか考える必要があります。そして、「簡単ですよ」「大丈夫ですよ」という言葉は時に、できない当事者に対する武器となり、成功した時の感動も低減させてしまうため、使うとしても「何が大丈夫か」特定する必要があるという心遣いも学びました。

  1. 車椅子の理解や操作スキル習得の意義

車椅子利用者は「障碍者」として社会的に弱い存在に捉えられがちで、車椅子の機能も利用者を支え方に焦点があたることが多いとされます。そのため、今後はまず車椅子に実際に乗って体験することを通じて、興味を持ってもらい、「(当事者は)大変だなぁ」という考えから「こんなこともできるんだ」と見方を変化させていく必要性を学びました。「車椅子=楽しい」というイメージは、当事者にとっての車椅子や障碍への捉え方を変化させ、日常生活の変化をもたらす可能性を学びました。

  1.  講習会を通じて感じたこと・考えたこと、今後の展望

筆者自身、車椅子の操作経験はほとんどなく、今回、本格的にその機能や動かし方を知り、普段の利用者の感じ方に想像を膨らませることができました。今回は理学療法士・作業療法士の視点から車椅子操作を学びましたが、指導時の心掛けの多くは、他領域の支援場面とつながる点が多いと感じます。例えば、対象者と信頼関係を構築しながら、その人の文脈に合わせた指導を行うことは、心のケアにおいて対象者のこれまでの生い立ちや困りごと、発達特性等を踏まえて、その人にあった言葉かけやアプローチを見つけ、生活を支える過程そのものであると思い、身体と心の両側面を多角的に見直すことができた。

また、今回は、協賛企業や大学の先生方の熱意とともに、短時間に成長する学生の様子を間近に見て感じ取ることができたことも大変貴重な経験でした。ご自身でも楽しそうに車椅子を乗りこなす先生や企業の方々を見て、自ら体験し楽しむことの大切さを改めて感じさせられたように思います。

今後、車椅子の楽しさや便利さをより実感していくには、やはり実際に使いこなせるようになることが不可欠に感じます。今後の機会も通じて、利用者や支援者の双方の立場から車椅子や関連領域の理解を深め、その可能性を考えていきたいと思いました。

この記事を書いた人

QUIs(くいず)
COILインターンシップ
コ・イノベーション研究所(COIL)インターンシップ生によるチーム。社会課題の解決、共生社会の実現に向けて事業立案、企画運営、コンテンツ制作など取り組んでいます。
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