一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

障害者スポーツの活動拠点について

 

制度上致し方ないとしても一般のスポーツ施設を使ってほしいです

 
富山市の勤労身体障害者体育センターが老朽化し、耐震基準も満たさないことから来年の廃止が決まっているそうです。これは全国に26ヶ所ある障害者スポーツセンターではなく、全国に約140ヶ所あるとされる障害者が専用又は優先的に利用できる体育館やプールを伴う施設に該当するかと思います。
この体育館がなくなることで地域の車いすバスケチームなどの障害者スポーツのクラブの活動拠点がなくなることとなります。
 
そこで富山県が県内の特別支援学校を代替施設として整備していくことを発表しましたというニュースです。 
特別支援学校のスポーツ施設を地域の障害者スポーツの活動拠点にしていくという事業は東京都では2016年頃から始まっています。
 
 
(外部リンク)
NHK 富山県のニュース
障害者スポーツの拠点  特別支援学校を代替施設として整備へ|
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20230914/3060014348.html
 
 
特別支援学校にはもちろん多目的トイレは完備されていますし、例えば知的の特別支援学校であっても身体との重複障害のある児童はいますから施設はバリアフリーです。さらに送迎バスを運行しているので都心であっても広い駐車場があり、車を利用する障害者も利用しやすいです。
こういった観点から特別支援学校を学外時間に解放し、地域の障害者スポーツ団体の活動拠点の選択肢を増やしていくというのは合理的で経済的な判断です。しかし、個人的にはいくつか課題もあると感じています。

 
①「利用できる時間が意外と少ない」
特別支援学校の体育館は、学内の部活や、生徒や親が参加する活動の拠点として既に結構使われています。そのため、利用できる時間が限定されるため、地域の中の1つの学校だけでは、元々専用で使えていたスポーツ施設の代替はできません。 
 
車いすバスケなど就労している年代の方がプレーする競技はいいですが、もう少し年配の方が活動する平日の日中は特別支援学校を利用することは難しいと思います。
 
②「新規参加者の受け入れが難しい」
東京都が特別支援学校の利用を始めた頃の話ですが、学校という空間の安全性を保つために利用する参加者の名簿を事前に学校に実際の利用のある程度前までに届ける必要がありました。僕が関わっていたインクルーシブなスポーツだと、昨日声をかけてもらって参加しましたみたいな方が結構いて、当日急に参加する方もいました。特別支援学校を拠点とすることで柔軟な参加者の受け入れができないと判断したため、僕は特別支援学校を活動拠点とすることを諦めました。
 
③「地域の障害のない人の目に入る場所で活動」 
障害者スポーツセンターを否定するつもりは全くないですが、障害のある方がスポーツをする場面が、地域の主に障害のない人が利用するスポーツセンターで見られることは一般の障害に対する認識の改善に有効です。
 
尊敬する重度障害の方が、私が社会で生活する様子を一般の人に広く見てもらうことに大きな意義があるという趣旨の発言をしてましたが、そんな感じです。
 
来年4月には改正障害者差別解消法が施行され、これまで努力義務だった民間事業者の障害者への合理的配慮が義務化されます。そういう意味でも困難であることは重々承知ですが、一般のスポーツ施設の活用というところも選択肢に加えてほしいと感じました。

 

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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