一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

ジャパンタクシーを利用して思ったこと

今日ジャパンタクシーを使いました

これまであまりはっきりした言葉で断言しては来なかったのですが、ジャパンタクシーはオリパラのいろんな問題の縮図だなと感じています。

オリパラが決まった当時、羽田空港からのリムジンバスは、リフト付き車両が2台しかなく、そのバスは特定の路線でのみ使われていました。

空の玄関となる羽田空港から都心への移動経路がバリアフリーでないという状況を解消するため、車いすユーザーが乗りやすいタクシーとしてジャパンタクシーが開発され、運用されています。今では都内のタクシーの3台に1台くらいはジャパンタクシーではないかと思うくらい普及していますね。

ジャパンタクシーの問題点

運用が始まった当初からこのジャパンタクシーの問題はいくつも指摘されてきました(メディアではほぼ取り上げられていませんが)。

車両後方ではなく、側面から乗車するため、車いすの横側にスロープを付けてさらに車いすユーザーが乗車するためのスペースを確保すると路肩から2m程度のスペースが必要となります。

後方から乗車するタイプだと、車は一般的なタクシー利用と同様に路肩にピッタリ寄せられます。そのため、狭い通路ではジャパンタクシー乗車時に道がふさがってしまいます。

また車いすユーザー用のスロープは組み立て式で社内2カ所に分かれて収納されています。これを組み立てるのに慣れていないと数十分かかる場合もあります。当時、僕の知人の電動車いすユーザーが通常福祉タクシーで20分ほどで移動できるところをジャパンタクシーを使って移動してみたら2時間掛かったと言っていました。

しかし、こういった「時間」は乗車料金に含まれないため、車いすユーザーに対応するためには、売り上げの減少(場合によっては運転手の収入減)が起こる可能性があります。

そのため、車いすユーザー向けに作られたジャパンタクシーではありますが、車いすユーザーを乗車拒否する事例が多く報告され、当時は大問題になりました。

乗車拒否はもちろんあってはならないことですが、運転手にこういう判断をさせる環境が作られてしまっていたこと(例えばジャパンタクシーを購入すると数十万円の補助金が付いたため、タクシー会社の購入が促進された等)にも問題はあります。

その背景を踏まえて起こった出来事

そういった背景を踏まえて、今日、ジャパンタクシーを車いすユーザーと利用しました。

リンク先の動画は後部座席を跳ね上げて車いすユーザーが入れるスペースを作る手順を示しています。こうすることで車いすユーザーは車いすに乗ったまま、タクシーに乗車できます。介助者がいればスロープもいらないですしね。

そこでジャパンタクシーの運転手に話したところ、「車いすのまま乗ると40分かかるから駄目だ」と断られてしまい、車いすをトランクに積むことになってしまいました。粘って交渉してみても、介助用の講習を受けてないから駄目だというような反応だったとのことです。

このジャパンタクシーは間違いなくオリパラのレガシーなんですね。だからこそ、運用については何とか顧客も、運転手も、タクシー会社も含めて負担のない対処が進めばいいなと思っていたのですが、まだまだこれについてはゴールは遠そうです。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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