一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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芥川賞受賞者・市川さんが訴える「読書バリアフリー」について思うこと

障害による読書制限は権利侵害である

芥川賞を受賞した市川さんのニュースが多く報道されています。時間がなくて原著が読めてないので早く読みたいです。

(外部リンク)
【第169回芥川賞受賞】「ハンチバック」市川沙央さんが会見

(外部リンク)
「重度障害者の受賞者、なぜ“初”なのか考えてもらいたい」芥川賞・市川沙央さん、読書バリアフリーを訴える
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64b88c04e4b038c60cc88b0a?fbclid=IwAR15-X6dMVEpR3JqyAc6JB_iDGulCOUarlB1-Ie17X8KkG4qSsX0nK7_6SQ

市川さんはこの作品を通して伝えたかったことに「読書バリアフリー」を掲げています。
記事を引用すると『「読書バリアフリー」とは、障害の有無にかかわらず、誰もが読書や活字文化を楽しめる環境を整えることだ。』ということです。(上の記事)

僕は活字中毒なので、自身が特定の状況に陥ったときに、活字にアクセスできないのは辛いなと感じます。
市川さんは「各出版社、学術界ではなかなか電子化が進んでいません。」とコメントし、さらに「私は、これまであまり当事者の作家がいなかったことを問題視してこの小説を書きました。芥川賞にも、重度障害者の受賞者も作品もあまりなかった。

今回『初』だと書かれるのでしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。それをみんなに考えてもらいたいと思っております。」と述べています。
確かに、学術論文へのアクセスはバリアが結構ありそうだなと感じます。

こういう議論になると重度障害者でもあったホーキング博士の話題が出てくることが多いと感じます。
「重度障害者ということで学業や研究の機会が得られなかったら、ホーキング博士の偉業はなかったですよ」という話ですね。

これは結構難しい問題で、障害のある個人の選択肢が障害のない人と比較して制限されている場合には、障害者権利条約の考え方では、障害のない人との平等を基礎として制限されない選択肢が提供されるべきということになります。
昨今ニュースでも見る相対的貧困の問題で考えると家庭の経済的状況に関わらず最低限の教育機会は提供されるべき(最低限をどこにするかという議論はここでは控えます)という感じです。

その結果、機会制限が解消された状態でどういう成果(今回の場合は芥川賞受賞)がでるかということと、機会制限を解消するための環境整備をどうするかということは分けて考えるべきと思います。

まあ市川さんは分かっていて伝わりやすいわかりやすい表現をしていると思いますけどね。
僕の尊敬する先生は「テキストや論文を書くには、書く分量の100倍は読まないといけない」と仰ってました。僕も100倍は読んでなくともテキストを書くには相応のインプットが必要です。

恐らく市川さんも今回受賞した小説を書くまでには相当のインプットが必要だったはずで、その時に読みたい、調べたいと思った時に、重度障害があることが理由で読むことができなかった経験があるのかと思います。

今となっては芥川賞作家ですが、そんな確約された成功などが目の前に提示されてなかった時期にどんな思いで自身や自身の作品と向き合ってきたのかは、ちょっと想像しようとするだけで、圧倒的な壁に向かっていくような作業もあっただろうと思うので、そこで突き進んだのが格好いいなと感じます。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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