名古屋城復元討論会での差別発言問題について
名古屋城のバリアフリー化は市長の責任が大きい
何度か取り上げてきた名古屋城バリアフリー化について続報が出ました。
討論会における差別発言について検証チームを、市が発足するそうです。検証には約1年かかる予定で、これにより名古屋城復元計画も遅れると記事内には書かれています。
名古屋城復元計画の遅れで懸念するのは、
「クレーマー(障害者団体)の責任で復元が遅れる」「当時の天守閣を再現するという歴史的価値が棄損される」というような声が高まることです。
今回の差別発言の問題は、市がある程度コントロールできる場に置いて建設的な対話を促すことができず(又は促すことをせずに)、想定される対立をあおり、差別発言を許容する状況を作ったことです。
(外部リンク)
名古屋城討論会の差別発言問題 市が検証チーム発足へ
▷https://mainichi.jp/articles/20230704/k00/00m/040/269000c
記事内(上の外部リンク)では、市職員がその状況を止めようとしていたという記述がありますが、市職員がそのような対応をすることが必要とされた現場に同席した市長が、そのことを現場で問題視することもなく「問題となる発言は聞こえなかった」という初動対応を取ったことが今回の検証チームの立ち上げにつながっているわけです。
この記事から思うこと
記事を一部引用すると下記のような発言を市長がしています。
『河村市長は3日の記者会見で
「復元を楽しみにする市民がものすごくたくさんいるので、早く本物の世界の宝を名古屋のまちに残したい」と述べた。
4日に報道陣の取材に応じた河村市長は「名古屋城の一番上の方だけは頼むで本物を作らせてほしい」と訴え、天守上層階への昇降機設置に後ろ向きな姿勢を見せた。』(引用ここまで)
前者については差別発言が問題になった討論会に「市が提出した」資料の中で天守閣までエレベーター設置を求める声が、市民の中で最も大きいことが示されています。
そして、結構信じられないのは、「名古屋城の一番上の方だけは頼むで本物を作らせてほしい」という発言です。
どう考察しても、「本物を作らせてほしい=今の状態(もしくはエレベーターを設置する状況での復元計画)は本物ではない」と受け取れます。
「それだけはやらせてほしい」というのは、「本物を作る」ということを最上の価値として、そうでない状況を低く見ているということで、その自分の夢を阻害しているクレーマーが障害者団体であるというふうに受け取れます。
今回の差別発言とこの市長の発言によって、さらに対立は進むのではないかと危惧します。
ちなみに歴史的建造物とバリアフリーというのは、結構相容れないものというふうに捉えられるかもしれません。
歴史的建造物のバリアフリー化の例
ちょっと古い記事ですが、リンク先のNHKの記事では歴史的建造物のバリアフリー化が特集されており、京都の清水寺でどのような取り組みをしているのか、ということが紹介されています。
(外部リンク)
「進むか?歴史的建造物のバリアフリー」(くらし☆解説)
▷https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/302609.html
伊勢神宮もバリアフリー対応をしています。
車いすで伊勢神宮参拝を実現!「伊勢おもてなしヘルパー」を利用して初詣にでかけよう!
▷https://www.iseshima-kanko.jp/reporter/barifuriisejingu
近くの筑波山神社も階段無しで上まで上がれるルートは確保されており、太いタイヤの車いすであれば砂利にも入れるようになっています。
この名古屋城の復元問題は、「合理的配慮のための建設的対話」ができていない象徴的な問題なのかもしれません。