一般社団法人 コ・イノベーション研究所

各種お問い合わせはこちらから

お問い合わせ お問い合わせ
お問い合わせ

by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

パラビジネスについて思うこと

言葉だけ新しくしても・・・

1年半くらい前に初めて見た言葉なのですが、「パラビジネス」という言葉があります。

(外部リンク)
千葉県‘はにわの町’の観光案内に「パラガチャ」設置決定! 『おりづるガチャ』をはじめ福祉生産品が観光案内ツールに。
https://www.atpress.ne.jp/news/360671?fbclid=IwAR28DFL1h18Le9cMioFhzPoYJ6a0xPlbb719D_by2v-I-o_Qu5_9puiqPEk

記事内には、下記のような記述があります。

パラビジネスとは?
障がい者がスポーツで生きがいを感じるパラスポーツがあるならば、障がい者が働くことで生きがいを感じるパラビジネスがあっても良いと考え、当法人では「パラビジネス」を提唱しています。

一年半前のネット記事(記事とは言ってもアットプレスなので企業発信のものですね)では、障害者の収入の10倍アップを目指すということがタイトルに書かれています。

ちなみに、1年半前のプレスリリースがこちらです。

(外部リンク)
障がい者の収入10倍UPを目的とした『おりづるガチャ』 千葉県発「パラビジネス」に千葉県大手企業が続々賛同!
▷https://www.atpress.ne.jp/news/298248

つまり、就労支援事業所等で働く障害者の工賃アップをビジネスで目指そうということです。

結構こういう記事を見るとうんざりするというか、一時期の自分にもそういう感覚があったなと自戒するというか。いっぱいあります。この系統の取り組み。

残念ながら非常に狭い障害者福祉業界は、一般のビジネスをやっていたりする方からは、
「ビジネスのノウハウが十分にない」と評価されることが多い
です。
そういった状況が、この業界に自分又は自社が関わることで大きく発展させることができるはずだという感覚を持たせてしまいます。

先人にもたくさん話を聞いてきましたが、こういう取り組みは少なくとも僕が生まれる前くらいから、
ずーっとあってほぼ上手くいってないです。

障害者福祉業界のビジネスの成功例:スワンベーカリー

数少ない成功例であるスワンベーカリーもスタートは同じです。工賃があまりにも安い。

その時に年に1回、施しの気持ちで購入するグッズの制作ではダメだ。

毎日買ってくれる商材を売らないといけない。

そして、その商材は、障害のない人の世界障害のない人の世界で競争力をもたなければならない。

ということで始まったと10年前くらいに講演で聞いた記憶があります。

(外部リンク)
スワンベーカリーの成り立ち:会社概要
▷https://www.swanbakery.co.jp/corporate/

この手の取り組みとして結構大事なのは「今の工賃を●●倍にすること」ではなく、どうすれば「最低時給を達成できるか」という考え方をスタートラインで持つ覚悟があるかどうかだと思います。

ちなみに、パラビジネスと言う言葉を聞いてパラスポーツとの関連で思うことは、少なくともパラスポーツ、またはその語源となっている障害者スポーツとは障害者の自立生活運動の歴史でもあるということです。

先日、大会があった車いすラグビーも、元々は車いすバスケをすることが難しい四肢麻痺の方が作ってきたものですし、僕が長らく関わっていたふうせんバレーボールも重度肢体不自由障害者の自立生活運動の中で開発、普及されてきました。

障害当事者の自発的な活動の積み上げという視点で見ると、パラビジネスではそこはあまり感じられないです。

ただ、こういった新しい活動を否定しては、障害者福祉業界は発展していかないとも思います。

これはわかりやすい事例ですが、これまでにも新しい造語がパラリンピック以降多く作られていますし、ぱっと見、当事者不在の取り組みも多く行われるようになっています。

そういったものがこれまでの数十年と同じように成果を遺せず消えていくのではなく、新しい何かにつながっていけばいいなと思います。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
戻る