一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

令和5年版 障害者白書が公開されました

令和5年版障害者白書を読んで思うこと

僕自身、まだ全然読めていないですが、目次を見て大きく変わった点は、
ここ数年ずっと章立てされていた「オリパラレガシー」の話がなくなり、障害者スポーツについては取り上げ方が大分小さくなりました。内容は、また読んでコメントしようかと思います。

(外部リンク)
令和5年版 障害者白書 全文
▷https://www8.cao.go.jp/…/r05hakusho/zenbun/index-pdf.html

昨年から引き続き、第一章は改正障害者差別解消法についてでした。

来年4月1日から施行されるため、今年度中に、各省庁からガイドラインが出てきます。(内閣府の法律のため)

障害者差別解消法自体は、2013年に国会で成立し、2016年4月に施行されました。これがきっかけで、というか恐らくオリパラ機運と合わせて取り組みが進んだところもありますが、その程度は分野に依ります。

スポーツ部門に関しては、まだまだ進んでいないです。

車いすでの利用を断る体育館もたくさんありますし、民間のジムなどでも障害を理由に利用を断られることもあると思います。唯一進んだのは、プロスポーツの観戦のところかなと思います。それも差別解消法によってというよりは、オリパラをきっかけに事業者の意識が変わったからではないでしょうか。

2016年4月の施行に向けてスポーツ庁では、どのような対策を考えているのか(どんなガイドラインを作るのか)ということを2015年10月頃にスポーツ庁のそれなりのポジションの方に訊ねたところ、差別解消法自体を知らなくて、そこでレクリエーションをしたことがありました。

そのレクリエーションがベースで、当時の鈴木長官が記者会見で話したというのは、今思うと恐ろしい記憶です。

今は変わっているといいなと思うのですが、確かに当時、障害者スポーツの関係者でこの差別解消法に危機感を持っていた方って、
いろんなところで質問をしていましたが、ほとんど合わなかったと思います。

約10年で状況は変わったと信じたいですが、来年の差別解消法では、民間事業者にも合理的配慮が義務化されるというところと、差別解消法の実施状況を踏まえ、各省庁のガイドラインが刷新されるというところがキーだと考えています。

差別解消法が施行されたにも関わらず、

・未だに公的な体育施設で障害者の利用が障害があることを理由に不当に断られている状況
・障害があることによって、スポーツへのアクセシビリティが制限され、スポーツを全くしていない層が多くなっている状況 なども

この改正法の施行に合わせて取り組めば、それなりの実行力を持つのではないかと思いますが、そういった議論が深まっていくことに期待します。

本件の関連記事について

本件に関連して、TBSニュースで気になる記事がありました。

(外部リンク)
「合理的配慮がないことは差別」と明記 令和5年版障害者白書▷https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/551848

合理的配慮がないことは、差別ということが障害者白書に明記されたと記事の中にも書いていますが、非常にミスリードをする内容です。

差別解消法の中では、障害を理由とした不当な差別的取り扱いは禁止されています。
その不当な差別的取り扱いの状況を解消するために必要な合理的配慮を提供することが、改正法から民間も義務となります。

法律用語だけ読むとわかりにくいですが、例えば、
入り口に段差のあるお店があり、そこに車いすユーザーが来店して、段差がバリアになっている場合を考えます。

その時に、例えば店員が段差介助したり、スロープ板を設置して入店できるようにするというのが合理的配慮です。

この合理的な配慮は、過重な負担とならない範囲で提供することとなっています。

例えば、エレベーターを設置したり、入り口の段差をスロープに変更する工事をしたりするのも合理的配慮ではありますが、金銭的負担が大きいです。こういった場合に、過重な負担であると考えることができます。

考えることができます、というのは、実際にどこからが過重な負担で、どこまでが過重な負担でない合理的配慮なのかは、
事業者と障害当事者との「建設的な対話」で決めることとなっているためです。

建設的な対話とはお互いが納得できる落としどころを見つけることを目的として、双方が歩み寄ることです。​

それができるなら、いま生じている問題のほとんどは解決するような気もするので、
この建設的な対話のやり方を周知していかないと差別解消法はあまり効果的な法律とはならないように思います。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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