一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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ダウン症の女の子をモデルにしたバービー人形について

 
マテル社ではこれまでにも車いすを利用するバービー人形や、補聴器や義足を付けたバービー人形を販売してきました。とくに車いすモデルについてはパラリンピックに合わせてかなり昔から商品が発表されています。
 
マテル社は「全ての子供たちがバービー人形に自分たちを見いだし」、「自分たちとは違う容姿の人形と遊ぶ」ことを目標としていることが記事でも紹介されていて、これもとても共感する考え方です。
今回発表されたバービー人形もダウン症の特徴を反映しつつ、とても可愛らしいモデルに見えます。そのため、ダウン症の方がモデルになっているとは知らずに購入する人もいるのかなと感じます。
 

すべての人は多様であるという無意識の理解を推進

 
国連からの『障害者権利条約』の昨年の勧告ではインクルーシブ教育の実現が強く求められました。小さい頃から「障害の有無」で分離されて教育を受けてきた人が、大人になっていきなりインクルーシブに取り組むのは難しいことだと思いますので、小さい頃から一緒にいることが重要です。そういった点からもマテル社もそうですし、レゴもそうですが、障害のあるキャラクターを特別にアピールするわけではなく、ラインナップに加えることは、そもそも障害の有無に関係なく、すべての人は多様であるという無意識の理解を推進すると感じます。
 
といったところで、2023年4月27日14時の時点で「Yahoo!ニュース」にどのようなコメントがついているか見てみましょう。
 
 
【1つ目のコメント】
(高評価17,817 低評価1,012)
『多様性、多様性って。便利な言葉として使ってませんか?
子どもたちの遊び方を見たら分かると思いますけど、
子どもたちは例え一種類のバービー人形でも楽しく遊べます。
自分達で世界観を作り、おままごとをし、そのバービーになりきる。
それだけでも十分に心は育っていくのではないでしょうか。
多様性を求めすぎて、それを善とし子どもに押し付けていませんか?
子どもたちは自分達でちゃんと想像して遊んでます。』
 
 
【2つ目のコメント】
(高評価8,340 低評価139)
『自分は足が悪くて色々不便な事もあるし
子供の頃それでいじめられたりもしたけど
自分が子供の頃に義足のバービーとかリカちゃんがあっても
それ選ばないと思う…
可愛くて手足の長いバービー人形に、
可愛い服を着せて遊んでた。
ばりっばりのアジア人のくせに。
自分もびっこを揶揄されたら傷つくし、
逆に病気の人を差別なんかしないけど
ましてや人種差別とかしないけど、
元男性が女性の競技に出るとか、
女子トイレとか温泉問題とか
その辺がね、なんでもかんでも垣根を取っ払うのは
それまたどうなんだろう?と思います。』
 
 
【3つ目のコメント】
(高評価287 低評価11)
『確かに多様性を認めること、
自分と異なる意見にも耳を傾けることは大事かもしれない。
しかし、やたらに多様性を尊重しようということは
やはりどこかでそれを認めていないからこそ、
そうしなければならないということの裏返しな気がします。
電車のシルバーシートと一緒で、わざわざ意識しなくても
自然と配慮出来る社会を目指したいものです。』
 
 

3つ目のコメントで若干気持ちが救われますが、1つ目と2つ目のコメントからはポリコレへの不快感が伝わってきます。
そしてそれらの意見への賛同が圧倒的に多いことに愕然とします。お笑いでも最近は「人を傷つけないように」という風潮がありますが、そういった話題へのコメントでも、今回と同じように昔自分を楽しませてくれたお笑いが規制されることに対してポリコレへの不快感が伝わるものが多いです。
 
昨今のポリコレとのお付き合いのしかたについてはまた改めて書こうと思いますが、ポリコレが時代の流れとなってきた中で、どのように商品や作品をアップデートしていくかというところが問われている気がします。ただそんな簡単なことではなく、ディズニーなんかは明らかに上手く行ってないですね。
 
少し話は逸れましたが、こういった状況をずっと見てきた僕の個人的な感想ですが、『他人事としてのダイバーシティには賛成、自分事としてのダイバーシティには反対』という風潮があるのかなと感じています。
つまり「多様性」「ダイバーシティ」という美しい言葉や理念には賛同するけども、それを実際に実行する場面が身近で生じて、さらにその実行によって自身の何か(楽しみ、便利さ、行動範囲など)が制限されることが生じるとそれには拒否反応が出るという感じでしょうか。そんな感じがしています。
 

僕はダウン症の女の子をモデルにしたバービー人形にはとても賛成です

 
正直今回の件であっても、ダウン症の方をモデルにしたバービーが、マテル社の数多あるラインナップの一つに加わったというだけで、そうでないモデルは比べ物にならないくらい販売されていますし、今回のモデルが売れるか売れないか、売れないから販売を辞めるかは営利団体としてのマテル社が自身の理念とともに決めればいい話で外野がどうこう言う話ではないと思うんですよね。
 
それなのに何でマテル社が数あるラインナップの中に障害者がモデルとなったバービー人形を加えることが多数派の不快感を引き出すのかはもう少し自分の中でも整理して考える必要がありそうです。
マテル社がその理念のもとに多様なバービー人形を販売することに僕は「賛成」です。

 
(外部リンク)
米国マテル社ホームページより
Barbie Fashionistas Doll with Down Syndrome | MATTEL
https://shop.mattel.com/products/barbie-fashionista-doll-down-syndrome-hjt05

米国マテル社YouTubeチャンネル「Barbie Life」より
Barbie Life – YouTube
First Barbie Doll with Down syndrome

 

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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