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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

東京都の障害者スポーツに関する意識調査が公表

令和4年度の東京都の障害者スポーツに関する意識調査が公表
 

2週間前になりますが、東京都が毎年実施している障害者スポーツに関する意識調査の報告書が公開されました。
 
130頁を超える報告書ですが、一次資料的なところまで丁寧にまとめられていますので、お時間ある方は原本を見てみてください。131頁から132頁に掛けてまとめが掲載されていますので、そこだけ見てもらっても概要は把握できると思います。

● 週1日以上スポーツ・運動を実施した人は35.2%、スポーツ・運動を実施していない人は44.4%。
【図表59】(P43 参照)
→東京都のスポーツ実施率のデータは国の調査よりもかなり高い結果が出ます(国の調査では25%前後)。近年の国の調査では「階段昇降」や「身体活動を伴うリハビリ」もスポーツとしてカウントするようになったのですが、東京都の調査ではそういった項目はスポーツにカウントしていません。ですので、スポーツの範囲がより広い国の調査よりもスポーツ実施率が高くなっているのは驚異的と言わざるを得ません。
この背景には調査対象がインターネット上でモニター登録をしている方となっていることが挙げられると考えます(報告書2頁に記載)。
 
後は、国の調査もそうなのですが、回答者の中で障害者手帳を持っていない非所持者の割合が41.9%と非常に高くなっています。ただこの非所持の手段が最もスポーツ実施率が低くなっているので、東京都のスポーツ実施率が国よりも高い理由はわからないですね。

● 過去1年間に実施したスポーツ・運動の上位種目は、「ウォーキング、散歩(74.1%)」、「体操(26.7%)」、「室内運動器具を用いる運動(14.9%)」
【図表70】(P50 参照)
 
スポーツ・運動の実施場所は、「道路や遊歩道(42.5%)」、「自宅(40.3%)」、「広場や公園(28.7%)」
【図表78】(P58 参照)
 

● スポーツ・運動を一緒に実施する人は、「一人(46.8%)」、「家族(34.3%)」
【図表86】(P64 参照)
 
 
● スポーツ・運動を実施する理由は、「健康・体力づくりのため(64.4%)」、「運動不足解消のため(45.3%)」、「楽しみや気晴らしのため(34.8%)」
【図表95】(P71参照)。
 
 
● 東京オリンピック・パラリンピック前後でのスポーツ・運動実施に関して約4割が何らかの変化を実感
「身近な場所で運動ができる機会が増えた(区市町村や都が実施するスポーツ教室等)」(17.1%)
「スポーツ施設スタッフの障害者に対する理解が進んだことにより、障害者の受入が進んだ」(12.9%)
「スポーツ施設のバリアフリーが整備されたことにより、障害者の受入が進んだ」(10.0%)
【図表102】(P75 参照)

● スポーツ・運動を実施しない理由は、「活動したいと思わない(73.6%)」、「活動したいが、身体的にできない(17.5%)」、「活動したいが、一緒にできる人がいない(4.2%)」
【図表109】(P81 参照)

● スポーツ・運動を行う際に必要と考える支援は、「会場までの送迎(13.1%)」、「適切な指導者(12.3%)」、「スタジアム、体育館など建物や設備のバリアフリー化(11.7%)」など様々
【図表145】(P110 参照)
 
● 全体の約半数が「スポーツや運動に関心はない」
現在のスポーツや運動への取組に対して、「スポーツや運動に関心はない」との回答が46.5%と最も高く、次いで「スポーツや運動を行いたいと思うができない」(19.3%)
【図表154】(P120 参照)
 
 
スポーツ・運動をするかしないかはその人の個人の自由なので、大事なことは、スポーツ・運動をしたいと思ったときに、障害のない人と比較して過重な負担がないかどうかということと思います。なので、大切なのは実施率ではなく、スポーツ・運動をしたいと思ったときに出来る場所があるかどうかということになります(これは調査しようと思うと結構難しいと思いますが)。
 
そういう意味で、スポーツ実施をしている集団でもスポーツを全くしていない集団でも、「スポーツや運動を行いたいと思うができない」と回答した人が2割弱いて、こういった層に働きかけをしていくのが現状としてできる最短のスポーツ実施率向上への道筋なのではないかと思います。

 
(外部リンク)
障害者のスポーツに関する意識調査|障害者スポーツの理解促進・普及啓発|東京都の障害者スポーツ施策|スポーツTOKYOインフォメーション
https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/seisaku/details/awareness_survey.html?fbclid=IwAR2BLEwrrFeC9vV2CpSWo9dyREN8EAGRHYUxUDr7DcjKrFgjwD7Tic4YY8Y

 

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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