一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

障害と戦争について

障害と戦争について考える

障害と戦争という2つの言葉には多くの相関があります。戦時中の障害者は、どのような存在であったか(どのような差別を受けていたか)、戦争が原因で障害を受傷した人たちはどう生きたか、戦傷者への福祉が今日のどのような制度に繋がっていったか、等々いろいろとあります。

戦時中は「戦争に勝つ」という目的を国全体で共有していたため、兵力にならないと判断された障害者は酷い差別を受けていたとされます。リンク先のNHKのページにもそういった経験談が紹介されています。

(外部リンク)
障害者と戦争
▷https://www.nhk.or.jp/archives/sensou/special/shougai/?fbclid=IwAR0iz-W9SrqjjdZl7FMj3ppM30KOahUzTVY6NS20e3wV6DxlR1CAnwZ6vOM_aem_AQpZut2w_z53DROGAhVqhUTqupUwsem3AkRhb0hEoSzYG7b3-wBkloHwl4iR3Ekrx9c

ドイツではホロコーストの中で虐殺の対象が障害者まで拡大し、障害者は障害者であることを理由に命を奪われました。

ドイツで障害者スポーツに関わる方の話を聞くと、恥ずべき歴史としてナチスの障害者の虐殺を語る人が少なからずおり、障害者スポーツに携わることが贖罪であるような印象を受けたことがあります。

東日本大震災では沿岸部の死亡率は人口比で1%でしたが、障害者手帳所持者に限定するとこの割合は2.5%まで上昇します。つまり、障害があることで避難の選択肢が限定されてしまったということです。これと同様に戦時中の避難時にも障害者は選択肢が限定され、介助なしでは逃げられないような場面はあったはずです。

実際に満州から引き上げ時に「障害があるから助からない」と判断され、日本の軍人に射殺された障害者を見た、という体験談を読んだことがあります。

一方で、例えば脊髄損傷の治療法はイギリスの第二次大戦中の傷痍軍人に対する対応の中で開発されたり、その取り組みが今のパラリンピックに繋がったりということもあります。

第二次大戦後に内戦があったスペインでは、視覚障害者となった傷痍軍人が多くいて、彼らの就労機会を作るためにスペイン政府は宝くじの販売権を与え、今、世界でもっとも裕福な視覚障害者のコミュニティはスペインにあるというのは有名な話だったりします。

身近に感じた戦争と障害

先週から毎年受託して実施しているJICAの研修が始まっています。その中で「戦争によって多くの障害児・者がいる」という国は少なくありません。

もちろん受傷のきっかけが戦争であってもなくても、研修の中で伝えるノウハウは活用してもらえるとは思います。

ただ今日、ある研修員から内戦によって多くの若い障害者がいて、ボッチャやフライングディスク(今日講義をした競技です)はきっと何かのきっかけになると聞いたときに、僕自身、戦争で障害を受傷した方とはこれまで出会っていないなということにふと気づきました。

思い込みによる決めつけが一番よくないと思うので、今年も各国からの研修員としっかりとコミュニケーションしていこうと思います。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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