一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

第三期スポーツ基本計画のパブリックコメントが始まりました

第三期スポーツ基本計画のパブコメが始まりました

今年は第二期スポーツ基本計画の最後の年で、来年度から新たに次の5年間の政策をまとめた第三期スポーツ基本計画が始まります。
第三期スポーツ基本計画について先日パブコメが始まりました。

この第三期スポーツ基本計画が来年度に施行されると、それに基づいて各都道府県が次の5年間のスポーツ基本計画を策定します。
2017年から始まった第二期スポーツ基本計画では、「障害のある人とない人がともに取り組むスポーツを普及すること」が盛り込まれました。

余談ですが、実は2016年4月にスポーツ庁内で関係者に障害のある人とない人がともに取り組むスポーツ体験会としてふうせんバレーボールと卓球バレーを行いました。

【スポーツ庁での体験会の様子】

その結果、2016年リオのオリパラの際に設置されたジャパンハウスでは、オリンピック期間、パラリンピック期間にそれぞれ1回ずつ卓球バレーの体験会が行われました。また2017年2月には日本スポーツ振興センターの再委託事業として、障害の有無・種別・程度や年齢・性別を問わずに参加可能な「共生型スポーツ」を活用した国際貢献事業の公募があり、私も以前所属していた団体での事業が採択され、南米でのスポーツ指導者の育成事業を行うことができました。

【南米での共生型スポーツ普及事業】

第二期スポーツ基本計画に上記の文言が盛り込まれたところへに直接影響したわけではないと思いますが、文言を盛り込むための実績作りや関係者への理解啓発には協力できたのではないかと感じています。

スポーツ基本計画の影響は地域に及ぶ

この文言が第二期スポーツ基本計画に入ったことやオリパラの招致が決まったことを受け、複数の県のスポーツ基本計画に、障害のある人とない人がともに取り組むスポーツの普及や、スポーツを通じて共生社会を作るなどの文言が盛り込まれることとなりました。そうすると予算が付くこととなります。実際に、岩手県ではスポーツを通じて共生社会を作ることが県のスポーツ基本計画に盛り込まれ、2019年度より、岩手県で2016年の国体に向けて普及されていた卓球バレーの教室やイベントを沿岸部の地域で行うための予算が県の予算としてつくこととなり、現在、岩手県では沿岸部で卓球バレーの大会が年に3回(それぞれ違う自治体で)行われています。

このように国のスポーツ基本計画は実際に都道府県単位で実施する障害者スポーツの事業に大きな影響を与えます。

一緒にパブリックコメントをしましょう

この前提に基づいて皆様に拡散・協力をお願いしたいことがあります。

2006年に国連で採択された障害者権利条約第三十条第5項は遊び・スポーツ・余暇及びレクリエーションに関する障害者の権利について記載されたものです。障害があることによて喪失している機会を障害のない人との平等な水準にするために5つのことをしましょうということがその第5項には書いています。

その中で2番目に書かれている文言が日本のスポーツ政策には全く反映されておりません。その内容を解説すると下記の通りです。

「障害のある人自身が、遊び・余暇・レクリエーション及びスポーツに関する活動を組織・発展させることを奨励し、必要があれば研修も行うこと(障害のない人との平等を基礎として)」

アメリカでの先進事例は1949年から始まっています

アメリカでは1949年に世界で初めての車いすバスケットボールの競技団体が設立されていますが、その運営は障害者自身が行うこととされ、実際に障害当事者が組織運営を行いました(これは社会に出ていく前に民主的な組織運営を経験する機会とするためという教育的な背景もあります)。もちろん、日本においても、競技団体には多くの障害当事者が参加をしています。

オリパラ以降、地域にどのように参加機会を作るか

問題は、オリパラが終わり、スポーツに関連する予算が縮小されていくことが想定されることです。これまでオリパラに向けて、特にホストタウン登録をした自治体などが積極的に行ってきた障害者スポーツに関するイベントや予算はオリパラの終了を受けて縮小されていきます。せっかく地域にできた参加の場を継続するためには、その場所があることでメリットのある人がその場所を維持していくしかありません。それは、イベントに参加した当事者であり、その家族なのではないかと考えます。

スポーツクラブを運営するためのアシスタントクラブマネージャーなどの資格は確かにあるのですが、障害のある方が参加する地域におけるスポーツ機会創出には、バリアフリー、ピアサポート、リスクマネジメントや利用できる地域の福祉サポートなど、既存の資格にはない知識(恐らく地域によって必要なノウハウは異なる)が必要となります。

障害のある人とない人がともに地域のスポーツ機会を作る

そういった必要な知識を提供し、障害のある人とない人がともに地域に参加の機会を作ることができるようにするため、是非、このパブコメの機会に、「障害者自身がスポーツ活動の運営や活動に携わることを奨励し、必要があれば研修もすること」を多くの方に意見として届けていただきたいと思います。

日本は障害者権利条約の締約国であるため、この文言を追加することは障害者権利条約の実施状況を改善することにもつながります。パブコメは1月19日までですので、是非一緒にこの要素をスポーツ基本計画に取り入れてもらえるように取り組んでいきましょう。

パブリックコメントは下記リンク先まで
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001201&Mode=0

長文大変失礼いたしました。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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