一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

【ドイツ通信vol.3】ドイツ車いすスポーツ連盟

ドイツの車いすスポーツを統括する「ドイツ車いすスポーツ連盟」

ドイツには、車いすスポーツを統括する「ドイツ車いすスポーツ連盟」という組織があります。

上の写真は、最近障害者スポーツ講習などでよく来ているパーカーですが、ドイツ車いすスポーツ連盟の
ジュニア・キッズ部門の関係者のパーカーで、背中にロゴが大きくプリントされています。

ドイツ障害者スポーツ連盟に所属する専門団体

ドイツの障害者スポーツを統括するドイツ障害者スポーツ連盟には、各州の障害者スポーツ連盟が所属しています。
しかし、障害者スポーツが第二次大戦後の車いすスポーツから始まった歴史的な背景なども踏まえ、
車いすスポーツにのみ特化した専門団体として、ドイツ車いすスポーツ連盟は、ドイツ障害者スポーツ連盟のに
所属し、ドイツ全土の車いすスポーツを管轄しています。

全国各地にある約350の車いすスポーツの地域型総合スポーツクラブを管轄し、
登録者の合計は約7000人です。

ジュニア・キッズ世代のスポーツ普及に成功した団体

障害者数の統計を取ると、年齢を重ねるほど人口が増える傾向があります。
これは加齢によって障害者となる方や、病気や事故などによる障害受傷が原因です。

そのため、特に肢体不自由障害においては若年層の人口が大変少なくなります。

若年層のスポーツ人口が一般的なスポーツ人口と比べて大変少なくなってしまうため、
ドイツ障害者スポーツ連盟全体では約60万人の登録者がいますが、18歳以下の登録者は全体の6~7%程度です。

しかし、ドイツ車いすスポーツ連盟では18歳以下の登録者数の割合は17%と大きく
障害者スポーツ全体の平均を上回ります。さらに、350あるクラブのうち、100のクラブでジュニア・キッズ世代向けの
プログラムが提供されるなど、参加の選択肢が地域に大変多くなっています。

なぜ、若年層へのスポーツ普及に成功したのか?


※ドイツ車いすスポーツ連盟ジュニア・キッズ部門のコンテナ。キャンプや講習会では多くの車いすが必要となる場合があり、このコンテナに20台以上積んで現場に移動することもあるそうです

ここまでジュニア・キッズ世代のスポーツ普及に成功した理由は、
運動導入キャンプの実施と、初心者に対応できる指導者の養成です。

キャンプの詳細についてはまたの機会に是非やりたいと思いますが、
これから運動を始めたいという障害児とその家族に対して5泊6日程度のキャンプを
行います。

近隣にジュニア・キッズ向けの車いすスポーツクラブがない地域であれば、
その地域で5家族程度が参加する形でキャンプを行い、キャンプ終了後に
参加者が独自にクラブを作りたいと思う動機づけを行い、実際のクラブ立ち上げに
向けての支援を行います。

こういった取り組みによって、ドイツには多くのジュニア・キッズ向けの車いすスポーツクラブが
存在します。

指導者の重要性

運動導入時の指導には、専門的な知識とノウハウが必要となります。
そのため、対象となる方を一か所に集めてキャンプを行うことができれば、
とても効率が良いですが、なかなか全ての人がキャンプに参加できるわけではありません。

そのため、各地域のスポーツクラブに初心者向けの導入指導ができる指導者を配置する必要があります。

障害による機会損失などによって身体動作に自信がない人に継続参加してもらえる動機づけができる指導者
初心者は特に身体操作経験が少なく、そういった対象にマンツーマンで成功体験を導く指導ができる指導者
能力差の大きい集団の中で適切なゲーム・遊び・スポーツを選定し、全員が主体的に参加できるカリキュラムを作成できる指導者

など導入指導を行う指導者に求められる条件は少なくありません。

ドイツ車いすスポーツ連盟では、リハビリテーションスポーツ指導者として初心者指導ができる
人材を1980年代から独自のカリキュラムで育成しているため、各地域での導入指導が可能となるのです。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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