一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

ストローケンデル博士の遺した言葉(8)

ストローケンデル博士の遺した言葉

ストローケンデル先生の言葉の紹介も今日で8回目です。
追悼イベント開催の明後日までちょうど10回になりますが、
このまま紹介を続けていきます。

今日は、先生の指導テクニックについて表した言葉を紹介します。

Weniges vielfältig anbieten und finden lassen.

Weniges vielfältig anbieten und finden lassen.
状況に応じた多様な指導をできるだけ少なく提供し、生徒に発見させる

スモールステップの指導の構築は先生が長く取り組まれたことですが、
各ステップで、特に「効率的に『成功体験』を導くためにどう指導するか」
というところにも先生の指導の特徴があります。

特定の課題における「成功体験によって得られる心理的な効果」の量は
一定です。指導者が手を出せば出すほど、生徒が「自分で習得した」感覚を
得にくくなるため、心理的な効果は少なくなります。

特にやったことのない課題や、運動導入間もない生徒については
いろいろと考えすぎてしまうことが習得を阻害することもあるため、
あまり多く説明をせず、最初の成功体験につなげる必要もあります。

視線をヒザに

前輪キャスターを上げて車いすを傾けた状態でバランスを取るキャスター上げですが、
この指導を行うとき、先生がよく使う言葉があります。

それが「視線をヒザに」という指導です。

実際に指導では生徒が視線をヒザの方向に落としているのがわかります。

このシンプルな声掛けによって多くの効果が得られます。

リスクマネジメント

例えばリスクマネジメントです。
指導者がいるときは後方で補助ができるため、後方への転倒は防げますが、
自宅に帰って自分で練習をしたりすることもあれば、
技術が身に付いた状態で街中で失敗することもあります。
後方転倒で一番危ないのは後頭部と路面の接触であるため、
顎を引いた姿勢が身についていれば万が一の事故の場合にリスクを軽減することができます。

動きの修正

小さいころ、ほうきや傘をてのひらに乗せてバランスを取った経験はみなさんあると思います。
是非、近くに長い棒があったら挑戦をしてほしいのですが、バランスを取ろうとするときに
動かすのは「手」です。しかし、「手」を見てバランスを取ろうとするのはとても難しいです。
逆にてのひらに乗せている長い棒の先を見てバランスをキープしてみると、より簡単にバランスが
取れます。

私たち人間は、結果(棒の動き)を元に自らの動きを修正します。
そのため、適切な体の動きを引き出すには結果を見なければなりません。

キャスター上げにおいても、動かすのは手です。
しかし、その結果車いすが前後に動きます。
車いすに乗った状態で微細な前後の動きを確認することは
困難ですが、手を前後に動かした結果、それに連動して
ヒザが上下に動くのです。

そのため、ヒザを見るということは結果を見て動きを修正する効果があります。

実は、この他にも、胸が開かないようにする、顎が上がらないようにするなどの効果が
このたった一つのシンプルな「視線をヒザに」という声掛けの効果としてもたらされます。

ストローケンデル先生の指導では、このような非常に洗練された声掛けが各所に見られます。
そして、このような声掛けはまさに成功体験を導くために考案されてきたのです。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
代表理事
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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