一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by 橋本 大佑(はしもと だいすけ)

JICAの『スポーツと障害者の社会参加』をテーマにした研修の講師

JICA課題別研修『スポーツを通じた障害者の社会参加の促進』

7月4日より7月27日まで実施されているJICAの課題別研修『スポーツを通じた障害者の社会参加促進』で講師を務めさせていただいています。2016年から実施されている本事業ですが、今年は期間中の9日間にわたって研修に帯同・参加します。

昨日は、私個人としては9日中の2日目の講習を有限会社さいとう工房(墨田区)のスペースをお借りして実施しました。

実技や講義、さいとう工房の斎藤社長が海外で実施してこられた障害者支援のお話などを通して、「スポーツと社会参加の関わり」というテーマを掘り下げていきました。

「スポーツへの参加⇒社会参加度の向上」と「社会参加度の向上⇒スポーツへの参加」

スポーツを通じた障害者の社会参加というと、例えば孤立状態にある障害当事者に対してスポーツ機会の提供を
通じて外出のきっかけを作り、そのプログラムの中で自信の獲得や仲間との交流を通して更なる社会参加へつなげる
というような活動が、ドイツなどで行われているアプローチです。

しかし、社会参加をしている当事者が自らスポーツ機会を作り出し、それが結果として周囲を巻き込む形で
当事者や社会の意識を変えていくという場合もあります。

さいとう工房さんでは、さくら車いすプロジェクトという活動を通してパキスタンの障害者支援を行ってきました。
その結果、パキスタンに手動車いすの工場ができ、当事者自身が製造を行い、その車いすを2005年におきたパキスタン
地震で障害を負った方に届けるという活動を行いました。

そうやって車いすを得た当事者が外出とともに始めたのが車いすクリケットです。
街中では皆がクリケットを行う国であるパキスタンでは、クリケットができないことが大きな心理的な損失に
つながります。

今では、街中の公園でも車いすクリケットがプレーされ、パキスタンからネパールやバングラディシュなどに
競技が広がりました。

そういった中で人々の意識が変わり、一昨年にはある街に200台のバリアフリーバスが導入されるなどの
社会の変化が生まれました。このように、スポーツというのは社会参加とは切り離せず、相乗効果を生みだす
こともできます。

逆に、スポーツが障害者への偏見を高め、それが一般の障害者の社会参加を結果として阻害するような
負のスパイラルが生じることもあります。

こういった状況がなぜ生じるのか、その違いが生まれる要因は何なのか、どのようなアプローチをすることで
スポーツは障害者の社会参加を促進するツールとして活用できるのか、というところがテーマで、9カ国から
参加した研修員の方々はとても熱心に参加してくれました。

写真は昨年度同じ研修プログラムにウルグアイから参加した方が実際に研修で学んだ卓球バレーを自国で
行っている様子です。まだまだこれからも研修は続きますが、何かを伝えることが遠い地で新たな機会の創出につながることを期待し、今後の研修を続けていきます。

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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