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by QUIs(くいず)

車いす講習(キャスター上げ)

皆様こんにちは!

COILインターンシップ生です。

この記事では、先日行われた車いす研修で学んだ「キャスター上げ」という前輪を浮かす技術についてと、それから私自身が学んだことや感じた事を書いていきます!

 

そもそもキャスター上げとは?

そもそも「キャスター上げ」とは何でしょうか。多くの車いすを使ったことのない人にとっては、まず疑問に思うところだと思います。キャスタ上げとはずばり、車いすの前輪(キャスター)を上げて後輪のみでバランスをとる、車いす利用において基本となる技術のことです。下の写真を見るとわかるように、少し車体が後ろに傾くようにし体勢をキープことで、キャスターが上がった状態でうまく車いすのバランスをとることができます。この技術を習得することで、車いすでの移動が格段に容易なります。

写真)キャスター上げ

 

ちなみに、このキャスター上げをしている時のホイールとキャスターの形が、一般社団法人車いすインストラクター協会(JWIA)のシンボルマークにもなっています。

 

ではそんな「キャスター上げ」は具体的にどのような技術で、どのように学べて、どのように実際に車いすユーザーが生活の中で生かすことができるのでしょうか?

 

 

キャスター上げは怖い!難しい!楽しい!

 

「キャスター上げなんてただ前輪を浮かすだけでしょ?」はじめはそう安易に考えていました。しかしやってみると、想像以上に怖くて難しい!

 

まずキャスター上げをやる前に、前輪(キャスター)を浮かしてすぐに下す、「スタンプ」という動作を覚えます。ハンドリムを瞬時に下げて上げると、「ダンッ」とキャスターが床を強く打ち付けます。ちなみにこの時の動きと音がスタンプに似ていることから、「スタンプ」という名前になったそう。そしてその動作を使うと、段差が登れるようになります。スタンプを習得すればこれは結構楽で、「意外と段差は車いすで簡単に上がれるのか…」と少し驚きました。段差の上に上ると次は実際にキャスター上げ。前輪を浮かした後小刻みにハンドリムを前後させることで重心の安定する位置で姿勢をキープします。そして最後に、その状態で少し前進し、後輪からゆっくりと段差を降りていきます。

 

こう記すとすいすい習得しているように聞こえますが、はじめは皆車いすを後ろに傾ける恐怖を克服することから始め、インストラクターの方に手取り足取り教わりながら徐々にできるようになっていきました。

 

 

上下写真)キャスター上げの説明を受けを教わっている様子

 

説明を受け、実際に2人一組になって練習。私は初め、想像以上にバランスのとれるポイントが後ろであることにびっくりしました。「これ以上行くと倒れてしまう…!」という恐怖感をまず抱くので、そこをいかに克服するかが第一関門です。恐怖感を克服したら、次はキャスターの上がった状態で小刻みにハンドリムを動かし、体勢をキープする練習。これもまた、はじめはすぐに前後に傾いて失敗してしまうことが多く、習得に時間がかかりました。試行錯誤を繰り返しながら、みんな何とか、何とかできるようになりました!

上下写真)2人ペアで練習する様子

 

一人で段差を上ってキャスターを上げ、ゆっくり後輪から下に降りれるようになった時の達成感は大きく、小学校の時に体育の時のようなワクワクも感じました。

 

マットの上でキャスター上げができるようになったら、次はフロアで行います。床が固いところでやると、マットの時よりも動作の難易度が上がり、キャスターを上げることへの恐怖感も増します。ここでもペアになってサポートしあいながら徐々にクリアしていき、一人でできるようになるまで反復練習をします。このころには皆板についてきて、慣れた手つきでサッとキャスター上げをしたりしていました!

写真)フロアでキャスター上げ練習をする様子

 

床でのキャスター上げができるようになったら、次は実際に車いすユーザーがするように、一人で段差をスムーズに上り下りする練習。段差との距離やスピード、上げる高さなどの感覚をつかむのにひと苦労しました。

写真)ひとりで段差の上り下り練習をする様子

 

慣れてきたら、徐々に2枚3枚とマットの枚数を増やし、高くしていきます。すごい人だとマット5枚以上も簡単に車いすで上がれるとか…。

 

写真)段差を高くして上り下り練習をする様子

 

ここまでできるようになったら、もう立派な車いすユーザー。キャスターを上げたまま前進・後退・急ブレーキしたり後ろ側から段差を上ったり、体の反動だけでキャスターを上げて段差を上ったり、後輪だけでぶんぶん回転したり…。「そこまで行くと実際には必要ないだろ!」と思いますが、キャスター上げを習得することで、段差をスイスイ上り下りしたり、実際に砂利の多い駐車場など悪環境の道を通れるようになったりなど、移動の幅が大きく広がるのだそうです。このように、とにかく実用的なことからアクロバティックなことまで、様々なことが車いすでできるようになり、皆最後のほうは思い思いにチャレンジして楽しみながら車いすの技術を磨き、様々な気づきを得ていました!

 

 

学んだこと、感じたこと

 

今回私が車いす研修でキャスター上げを体験を通じて学び、いくつかのことを感じました。

 

一つは、まずシンプルに車いすが「楽しい」ということ。「車いすでできることは少ない、退屈なのでは」と以前は固定観念を持っていましたが、多くのコツや技術があることを知り、さらに実際に体で覚えることで、それまで知り得なかった車いすの楽しい一面を知ることができました。また練習を通じて様々な技術や動作をできるようになるのには、一つのスポーツを新しく始めるときのようなワクワクと楽しみを感じるものがありました。

 

二つ目は、車いすの「利便性」です。車いすの乗り方を正しく学び技術を身に付ければ、想像以上に色々な所に自力で行けるということを肌で感じました。キャスター上げを覚え、そこから派生する動作を身に付ければ、一見不可能に見える障害や道路でも基本的に一人で安全に移動することができるのではと思いました。

 

またこれに関して、技術を身に付けることが社会復帰にもつながるということも学びました。車いすに乗る事を「楽しい」と思ったり、「外でも自力で移動ができる」と自信をつけさえすれば、自ら家を出て外で活動し、社会復帰しやすくなるのではと思います。不便さやストレスを感じていたり、職に就けなかったり、引きこもりがちになったりしている車いすユーザーの方にいかにこの技術やや車いすを乗ることに対するポジティブな感情を持ってもラうことができるかが、社会復帰において非常に重要なポイントであるということをしみじみと感じました。

 

反対に車いすを普段使わない人からして、そのような人が、車いすに乗っている人を見たり一緒に何かするときに「どう働きかけるのか」、というのが重要ではないかとも思いました。ただ同情するように気を遣ったりやさしくしたりするというのは、むしろ車いすユーザー本人からしたら、少しいい過ぎかもしれないけど、余計なお世話であったりなめられている感じだったり、有難迷惑であったりなどの、ネガティブな感情を抱かせてしまうことにもつながりうるのかもしれないのではと疑問に思いました。

 

最後に

まだまだ自分の中でも消化されているわけではありませんが、今回の車いす研修でキャスター上げ等の実用的な技術を学ぶことを通じて、インクルーシブな社会を創るには、車いすユーザーとそうでない人がお互いをどれほど知り、どのように相互作用していくべきなのかを共に考える必要があるなと思いました。今後活動を通じてより自分の中で車いすの技術やそれに伴う社会復帰等について理解の解像度を高め、それを自分の身の回りの若い世代を中心とした人達に広げていきたいと思います。

 

次の記事ではロールプレイングについてインターンシップ生が更新いたします♪

この記事を書いた人

QUIs(くいず)
COILインターンシップ
コ・イノベーション研究所(COIL)インターンシップ生によるチーム。社会課題の解決、共生社会の実現に向けて事業立案、企画運営、コンテンツ制作など取り組んでいます。
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