一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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by QUIs(くいず)

ガストロノミーの中心地 San sebastiánの魅力

こんにちは!インターン生の家中です。

先月までフランスに留学をしており、最後に西ヨーロッパ3カ国を周って帰ってきました。

COILでのインターンシップを通してガストロノミーツーリズムに興味をもったため、留学期間中にガストロノミーの中心地・San sebastián(サン・セバスティアン)に絶対に行く!と決めていたので、San sebastiánのガストロノミー、体験してきました!

そこで見た、歴史や人柄と発展の仕方の関係性、観光地としての魅力、食と環境配慮がとても面白かったのでレポートにまとめます。

 

San sebastiánってどんなところ?


 

San sebastiánはスペイン北部・バスク地方に位置する地域で、フランスとの国境に接しています。

かつては、過去の政治的なネガティブイメージや大きな観光地がなく資源に乏しいこと、年間を通して雨や曇りが多いなど恵まれない天候条件などの背景から、観光地として発展しなかったそうです。しかし現在では年間多くの人が訪れる人気スポットです。この地の文化を調べて、人気スポットとなるまでに発展したことと人々の文化は大きく関連していると感じました。

 

San sebastiánの人々は、共同体を大切する文化が根付いているそうです。その背景には、バスク語と彼らの生活スタイルがあります。

バスク地方で話されるバスク語は、起源不明の古い言語であり、政治的な国境をまたいで話されるため、国境では測れない個性や独自文化が発達したといいます。空港名もSan sebastiánのバスク語名である「Donostia」とどちらも名乗っていて、この地でバスク語が大切にされていることが良く分かります。

また、自給自足的な生活スタイルをとっていたこともあり、すべての循環を領域内でのみ行ってきたそうです。

これらの背景から、他とは孤立した個性・文化が発達していきました。南米への移住者も多いそうで、移住先でも独自のコミュニティを作って伝統を繋げていっているそうです。

 

また、農村共同体で生活していた歴史から、地方レベル・地域レベルで実践した共同体が多いそうです。モンドラゴンの協働組合企業やビルバオの官民連携都市設計がその例です。

 

 

San sebastiánのガストロノミー


 

そんなSan sebastiánにはたくさんの魅力的なガストロノミー資源があります。

漁獲の場となるビスケー湾、沿岸料理と内陸料理に分かれるバスク料理、山間部で作られるりんごが原料のシードル(サガルド)、南バスク地方の発泡ワインであるチャコリ、San sebastiánのバルに発祥のお店があるバスクチーズケーキ、レモンビールなどのクラフトビール、バル巡りに欠かせないピンチョスやタパスなどです。

La Vinaのバスクチーズケーキ   ↓レモンビール       ↓ピンチョス/タパス

       

 

この豊富な資源を使った「バル巡り」がSan sebastiánの定番の観光の仕方になっています。

バル巡り自体はスペイン中どこでも見られる習慣で、Txikiteoと呼ばれる、バルのタパスのはしごをする習慣です。ひとつのお店でタパスとお酒を頼み、終わったらすぐ次のお店に向かう、というスタイルです。

San sebastiánのTxikiteoの中心地は旧市街で、狭いこのエリアにあるお店のほとんどがバルです。San sebastiánに訪れた人のほとんどが寺院などの観光地ではなく旧市街にいるイメージです。

この観光スタイルのいいところは、観光のしづらい雨天でも、すぐに入れるお店がたくさんあるため天候に左右されないところだと思いました。

↓黄丸:バル巡り中心地・旧市街      ↓旧市街拡大地図

 

 

 

バルやレストランの特徴として、だいたいのお店が13時から営業しているため、早い時間からお酒も食事も楽しめます。また、ミシュランの三ツ星レストランが3店舗あり、星の数は16あるそうです。人口一人当たりのミシュランの星が世界一だそうで、歩いていてミシュランのシールが貼ってあるお店がたくさんあり、どこに入ってもハズレがなさそうでした。

 

実際に、どのバルに入ってもお酒はもちろんピンチョスやタパスがとても美味しかったです。どこで食べても美味しいのには、以下の理由があります。

①ヌエバ・コッシーナ(新しい料理)

レシピを教え合い、旅などで探してきた世界中の食材や調理技法を取り入れる。オープンマインド・オープンソース化。実際に4年制の料理大学で正式科目としてレシピを教え合う授業が開講されたそうです。

②ミシュランレストランと学校の連携

③美食倶楽部

自分たちで料理を作って楽しむ「美食俱楽部」というものが発達。日常的に「美食」を行っていたことにより、美食が地域に根付いたそう。

 

バル巡りの観光・環境配慮


 

バル巡りと聞くと、日本でいう食べ歩きを想像し、ゴミが多く出そうだと考えてしまいますが、想像以上のゴミ削減の取り組みに驚きました。

バル巡りは食べながら歩きではなく、食べてから次に行く、という想定なので、使われている食器は全て使いまわせる素材です。また、使い捨ての場合でも、土に還る素材を使うなど、プラスチックを徹底的に削減していることが分かりました。

  ↓ゴミは楊枝のみ        ↓手で食べるためゴミなし   ↓土に還る素材のスプーン

また、地元の港で獲れた魚や野菜を使用し、お客さんに地元の人も多く、地産地消を実践していることも実感しました。

はしごするこのスタイルの観光は、一品が小さくロスが出づらいこと、一人ひとりの胃袋に合わせて楽しめることも魅力だと感じました。

 

さらに、注文のしやすさから観光客への配慮を感じました。どのバルもピンチョスやタパスがガラスケースに入っているか写真付きのメニューを提供しているところが多く、言葉が分からなくても指さしで注文できました。紙にオーダーを書いて渡すシステムのお店もありました。

※ちなみに、日本人観光客が多いからか、日本語のメニューを提供しているお店もありました!

 

Bar Sportの日本語メニュー

 

 

観光地として人気になると、それだけ訪れる人の出身地域も異なるため、食事も配慮が必要になると思いますが、San sebastiánでは、海に近い地域のため魚が料理の中心にあったため、お肉のみを食べられない人が楽しむことは難しくなさそうでした。

しかし、ほとんどのメニューにお肉もしくは魚が使われていて、完全にヴィーガンの方に向けたものは、簡単には見つけられませんでした。

さらに、ベジタリアン・ヴィーガンと検索し出てくるお店は、バル巡りの中心である旧市街には多くなく、お店もバルの形態をとっていないため、ヴィーガンの人が食べ歩きをするにはハードルが高いのではないかと思いました。

 

まとめ


San sebastiánのガストロノミーについてまとめると、以下の通りになります。

 

①文化と発展の仕方へのあらわれ

サンセバスチャンの発展の仕方に、共同体意識の強さはレシピ共有、自給自足的な生活スタイルがそのまま地産地消で食材を賄っている部分など、バスク地方の人々の文化や生活スタイルが現れている。

 

②サステナビリティへの配慮

メインの観光の仕方であるバル巡りは、食べ歩きだが食べ「ながら」歩きではない。あくまでもお店の中で食べる前提で提供されるので、グラスやお皿、カトラリーは基本的には使い捨て素材ではなかった。お店の中で食べることで、特にカウンターの前で立ちながら食べることでお店の人とコミュニケーションもとることができる。お店の人の人懐っこさも魅力だった。

また、タパスやピンチョスはひとつひとつは大きくないので、すぐに食べきることができ、食べ残しが出にくいようになっているように感じた。

ヴィーガン対応は探しづらい印象があった。

 

 

日本に取り入れるとしたら??


San sebastiánが意識している部分と無意識の魅力を見てきて、日本で取り入れるとすればどんな部分を、どんな風に取り入れたら面白そうか、また、San sebastiánにまだなくて日本で実践できそうなことについて、考えてみました。

 

①地域らしさの取り入れ

サンセバスチャンの発展の仕方はサンセバスチャンの土地と独特の文化・価値観が共有されていたからかもしれない。日本でも、成功事例を真似するだけではなく、地域の人々の人柄や継続してきた文化と、資源を組み合わせた方法がオリジナリティがあって好まれそう。

 

②海外対応(メニューの工夫など)

言葉が分からなくても迷いなく頼める方法を作る。メニューを多言語化して対応する方法もあるが、指さしや紙に書いて頼むなど、より簡単な方法があると安心して頼める。

今あるスマホで注文するシステムがそれに近い。

 

③ヴィーガンマーク

サンセバスチャンではヴィーガンメニューを見つけるのは難しかった。ヴィーガン対応とお店の前に明記したり、メニューに明記するなどあれば誰でも入りやすい。

 

④サイズの工夫

日本でも、ヨーロッパでも外食をすると一皿あたりのサイズが人によっては大きいのではないかと感じる。サンセバスチャンはひとつひとつが小さいため食べ残しが起きにくいが、その形にできなくてもサイズを選べたり小さめに作るなど工夫があればフーロドスが減りそう。

 

⑤ごみを出さない工夫

日本は食べ「ながら」歩き文化、サンセバスチャンは食べ「て」、歩くという文化のように感じた。どんなに小さいものを食べるときでも、ゴミを出さないように工夫し、その不便を覆すくらい価値(お店の人やお客さんどうしのコミュニケーションやお店の雰囲気が素敵、など)がお店の滞在にあれば受け入れてもらえそう。

また、お皿も食べられるもので提供して食べ「ながら」歩きとゴミ削減の両方を実現できる方法もあるのでは。

この記事を書いた人

QUIs(くいず)
COILインターンシップ
コ・イノベーション研究所(COIL)インターンシップ生によるチーム。社会課題の解決、共生社会の実現に向けて事業立案、企画運営、コンテンツ制作など取り組んでいます。
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