一般社団法人 コ・イノベーション研究所

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「ケイコ 目を澄ませて」を観ました(映画レビュー その2)

おすすめポイントその1

「聴覚障害者を描くことが目的の映画ではありません」

※僕の勝手な感想です

主人公はアラサーの女性です。聴覚障害があり、働きながらボクシングをしています。彼女の過ごす日常を中心に映画は進んでいきます。聴覚障害者が主人公ですが、いわゆる「障害のある人が頑張っている」とか、「障害のある人の困りごとと支援者」とか、そんな内容では全くありません。

もちろん主人公の聴覚障害はとてもリアルに描かれているように見えました。しかし、この映画が伝えたいことはそこではなく、主人公の聴覚障害は映画全編を通して、映画が伝えたいことを効果的に伝える手段として機能していました。

通常の映画では主人公の「話す内容」、「行動」、「音楽」や「背景のシーン」などから感情を察していきます。しかし、この映画の主人公は聴覚障害のため、口話(音声で話すこと)が全くできません。そのため、「主人公が話す言葉」から主人公がどんな人間で何を考えているか、そしてその感情を察することはできません。

映画では主人公の顔が何回もアップになるのですが、観客はその表情から(特に目)から、感情を読み取ることとなります。さらにこの映画では音楽という要素も省かれていて、劇中に全く音楽が掛かりません。そのため、感情の読み取りの作業はとても集中力のいる作業となります。

僕は聴覚障害の方と関わることはほとんどないのですが、読話(相手の表情や口の動きから話していることを読み取る)ってこういうことなのかなと観ながら思いました。日本語は同音異義語(橋、箸、端)も多いですし、母音が共通する単語も多い(橋、足、菓子)です。そのため口の動きからだけでは全ての話し言葉を理解することは難しく、相手の表情などから話すことや感情を推察する必要があるため、読話は聴覚障害者にとって非常に集中力が必要な作業とされています。

読話とは「音声を聞くことができない相手の表情や口の動きから伝えたいことを読み取る作業」であり、この映画の観客はが行うのは「音声で話すことができない主人公の表情から感情を読み取る作業」です。似てませんか?

この作品の聴覚障害の主人公は岸井ゆきのさんが演じています。目力がすごくて、セリフがないのに、何か複雑な感情が伝わってきて、それを読み取りたいと集中させるすごい演技だと思います。

あと、僕は格闘技は詳しくないですが、ボクシングシーンは「仕上がってる」って思いました。

役作りのインタビュー動画がYoutubeにあったので紹介します。

 

外部リンク

岸井ゆきの、初のボクサー役に監督と猛特訓『ケイコ 目を澄ませて』トレーニング&コメント映像【2022年12月16日公開】 – YouTube

この記事を書いた人

橋本 大佑(はしもと だいすけ)
筑波大学で障害児教育を学んだ後、渡独して現地日系企業(THK株式会社)に勤めながら障害者スポーツを学ぶ。2009年に帰国し、障害者の社会参加を促進するためのスポーツを活用した事業を実施。2016年より現職。国内外で共生社会や障害者スポーツ指導者養成に関わる講習を行う。また共生社会の実現に向けて企業を対象としたセミナーやコンサルタントも行う。
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